グリーフの知恵

死別のグリーフ(悲嘆と反応)、グリーフワーク、グリーフケアとは

2020年12月29日

グリーフとは

グリーフ(Grief)とは、重要な誰かや何かを失うことに対する自然な反応のことです。

日本語では「悲嘆と反応」と訳されることが多いです。

様々なグリーフ

日本で「グリーフケア、グリーフサポート」と呼ばれる多くは、死別による喪失が対象とされています。

死別は人生で最大のストレスとも言われており、より長期的な関りが求められるためです。ですが死別以外にも、以下の様々なケースもグリーフの一環とされており、悲しみを引き起こす場合があります。

  • 離婚
  • リストラ
  • 身体に障害を負った
  • 昇進によるこれまでの人間関係の変化
  • 子どもが実家から巣立った後の空虚感
  • 新しい家への引っ越し
  • 認知症による記憶力低下

人生は喪失の連続とも言われますが、生きていくなかで経験するあらゆる変化は、グリーフ、喪失とその反応を連れてくるのかもしれません。

グリーフの反応とは

人は大切な人を死別によって失うと、感情面だけでなく身体にも行動にも様々な変化や影響が生じると言われています。そして、それらは人それぞれ違います。

さらに、段階的な経過を辿るわけではなく、1日の中でも様々な感情が行きつ戻りつします。ここでは広く遺族が経験する感情や症状を紹介します。

こころの反応

  • ショック、感情の麻痺
  • 絶望感、孤独感、無気力
  • 抑うつ、不安
  • 怒り、罪悪感、自責の念

からだの反応

  • 号泣、涙もろくなる
  • 睡眠障害、摂食障害、記憶力の低下
  • 疲労感、脱力感、ぼんやりする、ため息
  • 頭痛、めまい、動悸、胸の痛み、胃の痛み、関節痛
  • 過呼吸、パニック、幻聴幻覚

ショック、否認

「まさか」という、死を否定する気持ちが起こります。

ショックで心が麻痺してしまったように、大切な人が亡くなったという事実を認めることができない状態です。

無感覚のような状況にも陥ります。

この心理的反応は、耐えられない現実から自分の身や心を守るための正常な反応です。

罪悪感、後悔、自責の念

「この状況を防ぐために、自分は何かできたはずだ」「もし…していれば、あの人はまだ生きていたはずだ」大切な人が災害に遭う瞬間を目の前で見ていた人、自殺により命を絶ってしまった自死遺族、殺人などの犯罪や交通犯罪の遺族、子どもを成人まで育てられなかったという思いの遺族など、複雑なグリーフを抱える方によくみられる感情です。

大切な人の死は絶対に防げたのでしょうか。その人の生涯に渡り、防ぎ続けることが出来たのでしょうか。防げたかもしれませんし、防げなかったかもしれません。

自分ならもっとできたはず、自分なら人の命を生かせた、人の命を救えた。それは、自分の過大評価ではないのだろうかと、今一度心に問いかけてみてほしいのです。

「もし…していれば、あの人はまだ生きていたはずだ」それは「答えのない問い」なのです。あなたがその問いによって自分自身の心を傷つけてしまうのならば、その問いは一旦手放す、ということを考えてみてもいいかもしれません。

そして、あなたは今生きていて、これからの人生を生きる人でもあります。心にどうしようもない後悔を抱えているのなら、これから、その後悔を経験した自分として何ができるのか、それを考えながら、この長い長いグリーフの道のりを歩いていくことができるかもしれません。

怒り

怒りは、罪悪感、後悔、自責の念と深く関係しています。

命を助けられなかった医師や看護師に対してや、十分に手を尽くしてくれなかった友人や身内、さらには亡くなった本人に対して怒りの感情を持つことがあります。あるいは犯罪被害者にとって犯人への怒りは一生消えるということはないでしょう。

怒りはネガティブに語られることも多い感情ですが、人間ならどんな感情でも持っていて当たり前です。また、怒りの感情が、悲しみの渦中で日常生活を送るためのガソリンとして必要な時もあります。

さらに人間には、怒りなどの欲求エネルギーを社会的に価値の高い活動へと置き換える力も備わっています。心を不安定にしないために、人間に備わっている高度な自己防衛機能の一つです。

抑うつ状態

何もすることができないほど、強烈な悲しみに襲われる状態です。

抑うつ状態とは「ゆううつである」「気分が落ち込んでいる」 などの状態を言います。病名ではありません。

具体的な症状は、抑うつ気分・意欲の低下・興味の喪失・不安障害・睡眠障害・食欲低下のある状態です。心の風邪のようなもので、ある程度は誰もが経験することです。

しかし、大切な人との死別は、ほとんどの人を抑うつ状態に陥らせます。 それで通常なのです。抑うつ状態は、怒りを自分自身へ向ける場合に起こるとも言われています。

受け入れる

悲しみを抱えながらも、大切な人が生きていた頃の楽しかった記憶を思い出すことができるようになったり、新しい活動への興味を取り戻すことができるようになります。

亡くなった人とのご縁はずっと続いていきます。大切な人を想いながら、いつもそばに寄り添ってくれている、そう感じながらその後の人生を生きることができます。

グリーフワークとは

もともと英語の「Grief work」を日本語に訳したものです。”Work”というと、日本語だと「仕事」というイメージが強いですが、グリーフワークはグリーフを抱える人たちを支える仕事のことではありません。

ポイント

グリーフワークとは、大切な人を亡くした人や遺族が、その人自身で、自分の心と向き合い、その後の人生を生きていくための心の取り組みのことです。

例えば、心が大けがをした状態であっても、人間の身体にも心にも、自然治癒力が備わっています。

私たちは、グリーフを受け入れ、グリーフをその後の人生に織り込み、悲しみを抱えながらも故人とのつながりの中で生きていくことが可能です。

例えば、以下の活動は全て、遺族にとってのグリーフワークに当たります。

  • 初七日、1周忌、3周忌などの法要を営む。
  • 遺族のつどい(分かち合いの会)に参加して話しをする。
  • 亡くなった人を想い、仏壇に向かい、手を合わせて祈る。
  • 家族と亡くなった人のことを話し、悲しみを分かち合う。
  • 心の痛みを和らげるために、仕事や趣味に打ち込む。
  • 亡くなった人の家族や友人と、思い出話をする。

グリーフケアとは

グリーフワークのプロセスを支え、見守ることを「グリーフケア(grief care) 」と言います。 大切な人を亡くし深い悲しみの中にいる人たちに対し、寄り添って支援することです。

グリーフケアは、その人の自然治癒力が上手く発揮されるように、少しお手伝いするようなものです。イメージとしては、雨の中を一緒に傘をさして歩いてくれる人です。途中で、送り出してくれるような人です。その後、自分一人でも歩いていけるように。

  • ただそばにいて、沈黙も受け入れる。
  • 心の痛みや悲しみを自由に吐露できるような環境を作る。
  • もし遺族が話をしたら、ただただ話を聴く。(傾聴)
  • 希望すれば具体的なサポートをする。(掃除、買い物、子どもの世話)
  • 悲しみに暮れる時間を遺族が十分に取れるように配慮する。

避けたほうがいいこと

  • 話に耳を傾けず、自分の悲しみの経験について話す。例えば、子どもを亡くした親に、自分が両親や祖父母を亡くした時の話をする。
  • 悲しみをあなたや他の誰かと比較する。例えば「もっと辛い思いをしている人もいる」「息子さんを亡くしても、あなたにはまだ娘さんがいるじゃない」と言う。
  • ポジティブな考えで、悲しむ時間を奪う。例えば、配偶者を亡くした人に「また新しい出会いがある」と言う。子どもを亡くした親に「また産めばいい」と言う。
  • 「あなたの気持ちが分かる」と言う。
  • 間違った方法で悲しんでいると伝える。例えば「涙も見せないなんて冷たい、もっと泣いたほうがいい」「泣いてばかりいると亡くなった人が悲しむ」と言う。
  • 「立ち直れるよ」「時間が解決してくれる」と言う。

グリーフは愛したことの証明

「グリーフは愛したことの証明」という言葉があります。

大切な人を亡くした悲しみがゼロになることはないですが、あなたにとって大切な人だからこそ、この心の痛みが存在しています。

愛していたからこその悲しみであると、痛みであると、そう思うと、この痛みに耐えられるような気持ちになる、という方もいらっしゃいます。

気持ちを吐き出す大切さ

日本人は特に、感情を表に出すのが苦手な傾向があります。大切な人が亡くなった後も気丈に振舞うなど、自分の気持ちを抑えて我慢しがちです。

しかし、湧きあがった気持ちは吐き出すことが必要です。心にフタをして閉じ込められたままになった感情は、行き場を失い、悲しみが複雑になったり、身体に支障が生じてしまうこともあります。

悲しみと向き合い気持ちを吐き出す方法としては、2種類あります。

書いて気持ちを吐き出し、悲しみに向き合う

ひとつは「書く」こと。

和歌は古来からうたい継がれてきた日本独自の文化ですが、日本人は文字にすることが得意です。

話すのはちょっと苦手だけど、ノートやSNSに書き出すくらいなら…と感じる方は、気持ちを書くことがおススメです。

話して気持ちを吐き出し、悲しみに向き合う

もうひとつは「話す」こと。

家族、友人、カウンセラーや自助グループなどの第3者に、話しを聞いてもらうことです。

話すことは書くことよりも五感を使うので、悲しみを吐き出せたという実感が強いかもしれません。

その分、話しながら感情的になり、気持ちの揺らぎも大きいので、話し終わった後は意識的にリラックスできる時間を取るなど、自分自身を大切にケアできる時間が大切です。

メモ

書く、話す、どちらの方法でも、悲しみに向き合い、心の中にある気持ちを少しずつ吐き出すことができれば、気持ちが整理されて徐々に心が落ち着いていく、という効果があります。

死別の悲しみ語りませんか?遺族同士で交流できる無料掲示板

遺族サポートネットは、大切な人を亡くした遺族が、悲しみに向き合い、ありのままの気持ちや、心の中にある感情を少しずつ吐き出すことができる場所を提供しています。

まるで24時間運営のサポートグループのように、昼夜問わずいつでもメッセージを読んだり投稿したりできる無料コミュニティです。

ともか@遺族サポートネット

社会起業家 / 死別経験者のための無料コミュニティ運営中【病気, 事件, 事故, 自死, 流産, 死産, 乳児死, ペットロス】 / グリーフケア有資格者&心理カウンセラー研修生 / 自死遺族 / 裁判2年 / 大切な人を思いともに生きる

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